肛門周囲膿瘍とは?
直腸と肛門の境目にあたる歯状線に傷がつき、便に混じっている細菌などが原因で炎症を起こしてしまうことがあります。この炎症が、おしりの内側へ向けて拡がり、膿がたまった状態を肛門周囲膿瘍と言います。
主な原因は?
肛門周囲膿瘍は、歯状線にある肛門腺(粘液を分泌する腺)に細菌が侵入し、感染することが主な原因とされています。その結果、肛門周囲が化膿して膿がたまります。
なりやすい人は?
以下のような人・状態が肛門周囲膿瘍になりやすいと考えられます。
- 便秘や下痢などの排便障害
- 長時間座位での仕事、激しい運動(肛門周囲の皮膚が擦れることで、炎症が生じることがあります)
- 肛門周囲の外傷(細菌が侵入し、感染を引き起こすことがあります)
- 免疫力の低下
- 切れ痔を繰り返す人
- 炎症性腸疾患のある人
症状
肛門周囲膿瘍の症状には、以下のようなものがあります。
- 肛門周囲のしこりや腫れ、赤み
- 肛門周囲のにぶい痛み
- 38度を超える発熱
- 排便障害(排便時の痛み、排便がスムーズにできない)
- 悪臭・膿が出る
腫れや痛みなどの症状がある場合には、早めの受診をおすすめします。
発生部位
肛門周囲
好発年齢・性別
10~50代の男性に多くみられます。
病気に気づいたら?
専門病院の受診をおすすめします。
診断方法
問診・視診・触診
検査法
肛門エコーやCTスキャンなどで、膿瘍の部位や広がりを確認します。
治療法
基本的には手術療法を行います。
手術
まず、局所麻酔下にメスで切開して排膿(膿を出す)します。
経過観察し、膿が出続けた場合など症状が継続する場合は、3~4週間後に腰椎麻酔下にて根治手術を行います。
手術後の合併症
わずかな出血を認めることがあります。
退院後の日常生活
特に制限はありませんが、しばらくはシャワー浴が必要になる事もあります。
退院後の通院について
くるめ病院では、手術後1~2週間毎にご来院いただき、傷の状態を診察します。
薬について
一般的に切開排膿後は痛みが軽減しますが、痛みの強い方には痛み止めを処方します。
予防法
肛門周囲膿瘍の予防法には、以下のようなものがあります。
- 便秘や下痢をしないようにしましょう。そのためにも、暴飲暴食を控え、繊維質の多い食事を摂り、適度な運動を行いましょう
- 肛門を清潔にしましょう
- 規則正しく排便をする習慣を身につけましょう
- 禁煙しましょう(膿瘍の発症リスクを減らすことができます)
肛門周囲が腫れ、痛くて椅子に座れず、熱もあります。一体何でしょうか?
肛門周囲に痛みや腫れがある、おしりから膿が出る、発熱がある、などの症状から、肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう)を疑います。肛門と直腸の境にある肛門線に細菌が入って化膿し、膿がたまっている状態になっていると思います。
皮膚が破れて膿が自然に出たり、病院で皮膚を切開して膿を出したりすることで、一旦は症状が落ち着くこともありますが、繰り返して膿瘍ができ、肛門内のトンネル状の穴がはっきりする場合は、痔瘻(じろう)の状態となってしまいます。痔瘻になると自然治癒はしないため、早めに専門医を受診してください。
肛門周囲膿瘍になる原因は何ですか?
肛門周囲膿瘍は、肛門の中のくぼみから細菌が入り、肛門周囲が化膿し、膿がたまることが主な原因で、以下のようなものが挙げられます。
- 下痢や便秘
下痢や便秘が続くことで、肛門周囲の組織が炎症を起こし、膿瘍が生じることがあります。 - 免疫力の低下
免疫力が低下することで、細菌感染が起こりやすくなり、肛門周囲膿瘍が生じることがあります。 - その他
肛門周囲の切傷や裂傷 など
肛門周囲膿瘍は、飲み薬だけで治りますか?
肛門周囲膿瘍は、軽度の場合は飲み薬(細菌感染を抑えるために抗生物質)による治療で、一時的に経過をみることもあります。
ただし、飲み薬(抗生物質)単独での治療では、膿瘍の根本的な原因である腺の詰まりを取り除くことはできません。
肛門周囲膿瘍が進行している場合や、痛みや腫れが強い場合は、一般的に、膿を排出するために膿瘍の切開排膿術が行われます。
肛門周囲膿瘍は、早期治療が重要です。肛門周囲膿瘍の症状が現れたら、自己判断に頼らず、できるだけ早く受診して最適な治療を行ってください。
肛門周囲膿瘍は、自然治癒しますか?
軽度の肛門周囲膿瘍の場合は、自然に膿が出て、一旦症状が落ち着くこともあります。ただし、一般的には再発し、繰り返して膿瘍ができ、痛みや発熱などの症状が出る可能性があります。
膿がたまった状態が長期間続くと、さらに悪化する恐れがありますので、早めに受診していただき、治療を行うことが望ましいと思います。
肛門周囲膿瘍のため、切って排膿してもらいました。
楽になったのですが、なぜ痔瘻の手術が必要なのでしょうか?
膿を出して一時的に楽になったとしても、まだ原因となっている「肛門陰窩」という細菌の入り口は残っている状態です。手術をせず放置すると、多くの場合、再び膿瘍ができて、同様の痛みが生じることになってしまいます。場合によっては、前回よりも深くて複雑な膿瘍ができてしまうこともあり、痔瘻を併発していることが多くあります。
そういったことから、くるめ病院では、肛門周囲膿瘍を切開排膿後2か月程度経過して、炎症が落ち着いた頃に、痔瘻の根治手術をおすすめしています。