痔瘻(じろう)とは?

肛門と直腸の境にある肛門腺に菌が入りこみ、化膿すると肛門周囲膿瘍になります。肛門周囲膿瘍が慢性化すると、直腸と肌の間に膿(うみ)がたまり、瘻管(ろうかん:トンネル状の穴)を作ります。腫れやズキズキした痛みが起こり、38~39℃の発熱を伴うことがあります。

主な原因は?

下痢などがきっかけで、歯状線のくぼみ(肛門小窩)に細菌が侵入して細菌感染を起こすことが原因です。
痔瘻は、肛門周囲膿瘍からはじまり、その名のとおり肛門の周囲が化膿して膿がたまります。排膿されると症状は落ち着いて楽になりますが、瘻管ができた痔瘻となり、常に肛門周辺から膿が出るようになります。膿の出口はふさがっても、また腫れてきて、再び肛門周囲膿瘍を引き起こすことがあります。痔瘻は炎症を繰り返すとがん化して、痔瘻がんが発生することもありますので、必ず専門医を受診してください。

なりやすい人は?

下痢が続く人、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病など)の方などが、なりやすいとされています。

症状

  • 肛門の周囲が腫れる
  • 肛門痛(ズキズキした痛みがある)
  • 発熱(38~39℃)がある
  • お尻が熱をもっている
  • トイレットペーパーや下着に膿がつく(肛門周囲に開いた穴から膿が出ている)

痔瘻の分類

Ⅰ型 皮下または粘膜下痔瘻 肛門の皮膚と内括約筋との間を下に降りてくるもの
Ⅱ型 内外括約筋間痔瘻 低位筋間痔瘻 内括約筋と外括約筋との間を通るもので、下に降りてくるものが低位筋間痔瘻、上にいくものが高位筋間痔瘻
高位筋間痔瘻
Ⅲ型 坐骨直腸窩(肛門挙筋下)痔瘻 外括約筋の外側を通るもの
 Ⅳ型 骨盤直腸窩痔瘻 肛門挙筋上を通るもの

発生部位

肛門周囲・側方

好発年齢・性別

年齢層は広く、男性に多く(男性2:女性1)みられますが、その原因は、はっきりしていません。

病気に気づいたら?

早めに専門医を受診してください。

診断方法

視診、触診、肛門エコー、肛門鏡を用いた肛門診、内視鏡などで検査・診断します。

治療法

化膿の拡大を防ぐために抗生剤を、痛みや腫れに消炎鎮痛剤を使用しますが、完治までには至りません。そのため、瘻管(トンネル状の穴)を切開して排膿するか、瘻管を切除するなどの手術を行います。また、手術をしても再発する可能性があります。

手術法

①括約筋温存術
括約筋を切断せず、なるべく傷つけないように行う術式です。瘻管だけをくり抜く「くり抜き法」などがあります。

②切開開放術
瘻管を切開して開放する術式です。肛門後方部であれば、括約筋を切除しても肛門の機能に影響が少なく、ほとんど再発がないことが特徴です。

③シートン法
瘻管にゴムやチューブを通して、ゴム輪を締める力を利用して瘻管を徐々に切開する術式です。そのため、完治するまでに時間がかかります。

合併症について

手術後、腰椎麻酔の影響で頭痛が起こることがあります。
出血や傷が化膿したり、腫れることがあります。
状態により処置を行います。

退院後の日常生活

便秘や下痢にならないように食事や生活習慣に気をつけましょう。
仕事の再開については、退院時に主治医に確認してください。

退院後の通院について

退院後、1~2週間後に診察を受けてください。
その後は、症状により異なりますので、主治医に確認してください。

薬について

内服薬:
①消炎鎮痛剤(炎症を抑え、痛みを軽減します)
②ビタミンE(血行をよくして、うっ血をとり、傷の治りを早めます)

軟膏:
肛門部の血行をよくして、痛み、腫れなどの症状を改善する目的で使用します。

予防法

便通のコントロールをしましょう。

よくいただくご質問

くるめ病院にお寄せいただいた、痔瘻に関するご質問にお答えしています。
その他のご質問やご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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痔瘻とは、どういう病気でしょうか?


痔瘻とは、直腸と肛門周囲の皮膚をつなぐ瘻管(トンネル状の穴)ができる痔のことです。
肛門周囲に膿(うみ)がたまる「肛門周囲膿瘍」が進行して、慢性化することで痔瘻となります。

痔瘻は、肛門周辺の違和感(腫れ・ズキズキした痛み)、肛門から膿(うみ)が出る、38度以上の発熱を伴うなどの症状があります。


そもそも、なぜ痔瘻はできてしまうのですか?


痔瘻は、便秘や下痢などによって肛門組織に細菌が入り込むことが主な原因です。

便秘になってトイレでいきんだり、ひどい下痢で大量の水様便が勢いよく出てしまうと、便が肛門腺窩から肛門腺に押し込まれますが、肛門には細菌に対する強い免疫力があり、通常は炎症を起こすことはありません。

しかし、その時にストレスや疲労などで肛門の免疫力が落ちていると、便に含まれている細菌の感染を防げずに炎症を起こし、肛門腺が化膿することがあります。この化膿によって、膿(うみ)が大量に肛門の周りにたまる「肛門周囲膿瘍」の状態になります。膿が出てしまうと、症状は一旦落ち着きますが、瘻管(トンネル状の穴)ができた痔瘻となり、常に肛門周辺から膿が出るようになります。


痔瘻を薬で治すことができますか?

薬については、化膿の拡大を防ぐための抗生物質、痛みや腫れを除くために消炎鎮痛剤などを使用しますが、一時的に症状を抑えるものとなり、完治することはありません。肛門の近くに膿の出口がある浅い痔瘻で、痛みや腫れ、発熱など炎症が強くない時は、薬を使用して経過をみることがあります。

これまでに何回も肛門周囲が腫れて、肛門の奥で炎症が進み、高熱が出ているなどの症状がある場合は、原則として早期に瘻管(トンネル状の穴)を切り開き排膿するか、少なくとも膿の入口を取り除くなどの手術を行う必要があります。

痔瘻は炎症を繰り返すと「痔瘻がん」が発生することもありますので、自己流の治療に頼らず、早めに専門医を受診してください。


痔瘻の手術をすると、肛門の機能が低下しないか心配です。


以前の痔瘻の手術では、痔瘻を開いたり(瘻管開放)、切り取ったり(瘻管切除)して治していましたが、その引き換えに「括約筋」という肛門を締める筋肉も切られていました。

複雑な痔瘻の場合では、多くの括約筋が切られてしまい、便やガスが漏れるようになることもありました。この弊害をなくすために、括約筋を切らずに痔瘻の手術を行う「括約筋温存術」の研究が進み、多くの症例に用いられるようになっています。

くるめ病院では、患者様のQOL(Quality of life:生活の質)を重視して、痔瘻の方向や走行、深さなどに合わせて、さまざまな治療手法を取り入れています。


赤ちゃんの肛門の周りが赤くなり、時々破れて膿が出ています。
どうしたらいいでしょうか?


乳児の痔瘻は、早い場合は生後間もなく、多くの場合は1か月から数か月で発生します。症状は、肛門周囲が赤く腫れる、肛門周辺から膿が出る、排便時などに痛がる(泣く)、発熱するなどがあります。

乳児痔瘻の特徴は、以下のとおりです。
①圧倒的に男の子に多く、女の子にみられるのはごく稀
②痔瘻のタイプが単純で、痔管(トンネル状の穴)が浅く直線的
③肛門の左右側方にできやすい

「おむつかぶれ」とよく間違われやすく、治療が遅れるケースが多くありまので、注意が必要となります。

治療は、まず局所を清潔にし、早い段階では抗生物質を使用します。それでも化膿する場合は、切開排膿を行います。その後、しばらく様子を見て症状が治まらない場合は手術になります。

くるめ病院の場合、全身麻酔下で手術を行い、短時間で完了となります。入院期間は個人によって異なりますが、およそ3日間程度となります。