肛門周囲皮膚炎(肛門湿疹)とは?

肛門周辺部にさまざまな原因によって、痒みやしみるような違和感を伴う病気です。

主な原因は?

排便後に肛門周囲の皮膚に便が付着しておこるアルカリ性皮膚炎、不潔による真菌感染、汗やいきみすぎによるかぶれ、シャワー付きトイレによる頻回の洗浄等の刺激で発症します。

なりやすい人は?

  • 香辛料・コーヒー・アルコールなどを多く摂取する人
  • 軟便・下痢を繰り返す人
  • シャワー付きトイレや石鹸等でお尻を頻回に洗うきれい好きな人
  • 排便時にいきみすぎる人
  • 仕事上、肛門をリラックスできない人

症状

肛門部の痒み(特にお風呂上り後に症状が強くなるのが特徴)や痛み、しみるような感じ、肛門のベトつきなど。

発生部位

肛門周辺部

好発年齢・性別

年齢・性別に関係なく認められます。

病気に気づいたら?

自己判断で軟膏をつけないで、専門病院を受診してください。
似たような症状で悪性腫瘍(肛門がん・パジェット病・悪性リンパ腫など)や感染症(コンジローマなど)を認める場合があります。

診断方法

専門医による検査が必要です。

検査法

表皮の真菌検査や必要に応じて組織診を行います。

治療法

当院のケアの基準があります。スキンケア外来(皮膚排泄ケア認定看護師の指導のもと)の受診、抗真菌剤・抗炎症剤・抗ヒスタミン剤・ステロイド軟膏で処置します。

薬について

湿疹用の軟膏(ステロイドや炎症を抑えるもの)。

予防法

香辛料・コーヒー・アルコール・チョコレート等は控えてください。
座る仕事の方は、まめに立つようにして、お尻を蒸れさせないようにします。
トイレットペーパーで何度もゴシゴシ拭かないようにしましょう。また、シャワー付きトイレは、ほどほどに使いましょう。

よくいただくご質問

くるめ病院にお寄せいただいた、肛門周囲皮膚炎(肛門湿疹)に関するご質問にお答えしています。
その他のご質問やご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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真菌検査って、どのような検査ですか? 痛くないですか?


病巣部をセロファンテープで採取しますので、痛くありません。
また、テープ検体を顕微鏡で観察して診断し、約1時間くらいで結果がわかります。


市販の薬をつけても、かゆみがとまりません。
どうしたらいいですか?


かゆみの原因として最も多いのが、腸から分泌される粘液が肛門周囲に付着することによって生じる「かぶれ」です。
粘液分泌が異常に多い場合には、大腸の炎症などが原因となっている可能性があるために、大腸内視鏡検査が必要なこともあります。

他にも、「カンジダ」という真菌(カビ)や「ぎょう虫」などの寄生虫、食物などが原因となっていることもあります。

また、痔核や痔ろうといった肛門の病気がある場合には、肛門周囲に粘液が付着しやすくなるために、かぶれやただれが生じやすくなることもあります。さらにこのかゆみの場合は、まれに悪性腫瘍が原因となっていることもあります。
薬でなかなか改善しない場合は、組織を採取し、顕微鏡で詳しく調べる必要があります。


お尻がかゆいのですが、別の場所や他人にうつりますか?


はい、別の場所や他人にうつります。
真菌症は家族や他人に移さないように十分注意しましょう。
タオルなどを共有する事は絶対止めて、自分のタオルを用意しましょう。そして、タオルも熱湯などで滅菌処理して洗濯し、外に干して乾燥させるとよいでしょう。


肛門周辺が赤くなり、かゆみがひどいです。何が原因でしょうか?


下痢などで何回も排便したり、入浴できなかった後に、肛門の周囲が赤くかぶれたり、ただれたりして、激しいかゆみが起こる状態を肛門周囲皮膚炎といいます。

ただれた部分から分泌物が出ることで、さらにかゆみが増し、爪でかいてしまうと周辺に炎症が広がり症状が悪化します。この状態が長期化すると、肛門内に炎症が広がり、裂肛に進行することがありますので、症状が進行していたり長期化している場合は、肛門科の受診をご検討ください。


肛門を清潔に保っているのですが、かゆみや痛みが一向に治りません。
どうしたらいいでしょうか?


肛門周辺のかゆみや痛みを感じると、多くの人が「清潔さの問題」と考えがちです。
そのため、排便後に何度も温水で洗ったり、入浴時にたくさんのボディーソープや石けんを使ってこすり過ぎることがあります。
肛門の皮膚は、便からの保護のために重要な役割を果たしています。しかし、過剰な清潔さによって、逆にこの皮膚の役割を損なってしまう可能性があります。

肛門周辺のかゆみや痛みがある場合、排便後にはむやみにこすらず、軽く押さえ拭く程度にとどめましょう。皮膚を保護するためには、ワセリンなどの軟膏を使うことも有効です。

それでも7〜14日間経っても症状が改善しない場合は、専門医の受診をおすすめします。改善しない場合は、さまざまな原因が考えられ、正確な診断と適切な治療が必要となります。


肛門の周りがよくかぶれます。予防法はありますか?


肛門周囲皮膚炎の予防には、以下のような方法があります。

清潔を保つ
毎日のお風呂やシャワーで肛門周囲を清潔に保ちましょう。排便後は、肛門周囲をやさしく拭いて清潔に保ってください。
過度な清潔さを避ける
肛門周囲を過度に洗浄することはかえって皮膚トラブルを引き起こすことがあります。適度な清潔さを保ちつつ、過度な洗浄は避けましょう。
適切な下着の着用
清潔な下着を着用し、湿気や汗を逃がすために通気性のある素材のものを選びましょう。また、濡れた下着や水着を長時間着用しないようにしましょう。
適切な栄養と水分摂取
バランスの取れた食事を摂り、水分を適切に摂取することで下痢を予防しましょう。

これらの予防方法を実践して、肛門周囲皮膚炎のリスクを減らし、健康な皮膚を保つようにしてください。


肛門の周りが、かぶれています。自宅で行えるケアはありますか?


まず、お風呂に入って肛門を清潔にします。ただし、ボディーソープや石けんを避け、やさしく洗うようにしてください。

排便後は、シャワーかトイレの温水シャワーを使い、柔らかいタオルで肛門部の水分を押さえ拭くようにしてください。

次に、湿疹用の軟膏(炎症を抑えるもの)を一日2回程度、肛門の周囲にすり込むように塗ります。かゆみが強いときは、ステロイド(副腎皮質ホルモン)を含んだ軟膏を使用します。

刺激物を控え、十分な休息をとって体調を整えると、通常1~2週間程度で改善することが期待されます。症状が改善しない場合や、悪化している場合には、早めに専門医の受診をご検討ください。