感染性胃腸炎とは?

感染性胃腸炎とは、様々な原因による症候群で、ウイルスや細菌によるもののほか、寄生虫によるものもあります。
一年を通じて発症しますが、冬季に発生するもののほとんどがウイルスによるもので、例年初冬から増加し始め12月頃にピークとなります。一方、細菌による胃腸炎は夏場に集中します。

主な原因は?

原因には以下のウィルスによるものや細菌によるものなどがあります。

ウイルス:ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルス、アストロウイルスなど
細菌:サルモネラ、カンピロバクター、エルシニア、病原性大腸菌、腸炎ビブリオなど
※1.食品から病原体が検出された場合などは食中毒となります。
※2.学校、保育園、社会福祉施設など集団生活をする施設で発生した場合は、集団感染になることがあります。

症状

症状は原因となる細菌やウイルスによって少しづつ異なりますが、発熱、下痢(水様便、血便など)、腹痛、悪心、嘔吐などです。これらの症状が単独または、複数の症状が様々な組み合わせで出現しますが、原因となる病原体、患者個人間で大きな差があり、症状の重さも様々となります。

感染経路

人から人への感染
吐物や便の中に含まれるウイルスが手、あるいは手で触れたものを介して口に入り感染します。吐物の飛沫から感染する場合もあります。

汚染された水、食品からの感染
食品を介した感染で最も多いのは貝類による感染で、ウイルスに汚染された二枚貝(牡蠣など)を生、あるいは加熱が不完全なままで食べることにより感染します。また、感染性胃腸炎の病原体を持っている人が調理した際に食品が汚染され、その食品を摂取した場合に感染する場合もあります。

ペットを介した感染
一部では、ペットを介した感染も報告されています。口から口での食べ物の受け渡しや、同じ箸での食べ物の共有などペットの扱いにも注意が必要です。

予防方法

1.手洗い・うがいを励行しましょう。
感染性胃腸炎は、多くの場合、患者との接触や、汚染された水、食品によって経口的に感染します。手洗い、うがいを励行し、日常的に清潔を保つことが重要です。特に、排便後や調理前は石けんと流水での手洗が大切です。タオルの共用を避けることも必要です。

2.体調を良好に保ちましょう。
十分な睡眠と栄養を取り、体調を良好に保ちましょう。

3.便や吐物の処理は、手袋を使用しましょう。
便や吐物の処理をする時は素手で触らず、ビニール手袋を使用してください。
汚物の消毒は市販の塩素系消毒剤(漂白剤)を希釈したものを使用してください。

4.生ものを避け、加熱しましょう。
ウイルスは熱を加えると死滅するので、ウイルスに汚染されている可能性のある食品は、中心部までよく加熱してください。食品の中心温度85度以上で1分間以上の加熱を行えば、感染性はなくなるとされています。

治療法

一般的には対症的な治療が中心となります。具体的には、下痢や嘔吐などで体内から失われた水分や電解質を経口や点滴などで補給し、脱水の改善と電解質(イオン)バランスの調整が行われます。また、患者様の年齢、症状等を考慮して抗生物質が投与されることもあります。

経過観察

潜伏期間は病原体によって異なりますが、一般的には1~3日程度(短いものでは6時間、長いものでは10日前後まで)です。
この間は、本人に症状はありませんが、他人に感染させる可能性があります。原因となる病原体によっては、その他の感染症を合併したり、症状が比較的長く続くこともあります。また、乳児の場合には病気の進行が急速なことが少なくないので、発熱、下痢、嘔吐などの症状があらわれたときには、早めに医療機関を受診して治療を受けてください。家族など周囲の人達による注意深い観察と配慮が重要です。

病気の発見や治療が遅れた場合には、嘔吐、下痢、発熱などの症状が組み合わさることによって脱水症が重症化して、生命にかかわることもあります。ありふれた病気、たかが脱水症だと軽視すると、非常に危険な状態に陥ることも少なくありませんので、十分な注意が必要となります。

『下痢』に関する「よくいただくご質問」は、こちらからご覧ください。

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感染性胃腸炎の潜伏期間はどれくらいですか?


感染性胃腸炎の潜伏期間は、感染源から病原体が体内に侵入・増殖し、免疫応答(免疫細胞がアクションを起こすこと)が始まるまでの時間によって異なります。

ノロウイルス
ノロウイルス感染の潜伏期間は24〜48時間です。下痢や嘔吐が急激に現れます。
ロタウイルス
ロタウイルス感染の潜伏期間は2〜4日です。幼児や子供によく見られます。
腸管アデノウイルス
腸管アデノウイルス感染の潜伏期間は3〜10日程度です。幼児や子供によく見られます。
病原性大腸菌
大腸菌感染の潜伏期間は4〜8日です。症状は激しい腹痛で始まります。
サルモネラ菌
サルモネラ菌の潜伏期間は6〜72時間です。下痢や嘔吐が急激に現れます。


人との接触がなくても、感染性胃腸炎になることはありますか?


感染性胃腸炎は通常、感染源となる病原体(細菌、ウイルス、寄生虫など)が口に入ることによって発症します。そのため、人と直接接触しなくても、感染する可能性があります。

例えば、すでに感染している食べ物や飲み物を摂取することで感染することがあります。また、空気中や衣服などの表面に付着した病原体が口に入ることで感染が広がることもあります。これは、感染者の排泄物や飛沫が環境中に存在し、それが手などを介して口に運ばれる可能性が考えられます。

これらのように、他の人と直接会わなくても、感染性胃腸炎の原因となる病原体との接触によって感染する可能性があるわけです。

予防策としては、手洗いや衣服の消毒、食材の十分な加熱(加熱中心部が85℃~90℃で90秒以上の加熱が望まれる)、清潔な水の摂取などが挙げられます。感染が広がる可能性のある状況では、特に注意が必要とされます。


家族がノロウイルスに感染しました。
うつらないようにするためには、何に気をつければいいでしょうか。


ノロウイルスは感染力が強く、集団感染や食中毒を引き起こすこともありますので、特に注意が必要です。
嘔吐や下痢の症状がある場合、嘔吐物や便には大量のウイルスが含まれているため、感染の予防のために十分な手洗いと適切な消毒を行ってください。

消毒には家庭用の塩素系漂白剤が有効です。嘔吐や下痢で汚れた場所は0.1%に薄めて使用してください。ドアノブや蛇口などの室内で触れる場所は、0.02%に薄めて拭き取るとよいでしょう。

嘔吐物や便等で汚れた衣服は、水洗いした後、塩素系漂白剤で消毒し、他の人のものとは別に洗濯してください。

消毒を行う際には、使い捨てのレインコート、手袋、マスクなどを着用し、感染を防ぐように注意してください。

症状のある人は定期的に手を洗うことはもちろんのこと、タオルの共有は避けてください。また、感染者は一番最後に入浴するようにして、お風呂につかる前にはお尻をよく洗うようにしましょう。


感染性胃腸炎は、病院へ行く必要はありますか?


症状が軽い場合は、特別な治療なしで十分な水分を摂り、胃腸を休めるだけで改善することもあります。

下痢や腹痛、嘔吐が長く続く場合、特に嘔吐が強く飲食できない場合は脱水症状を起こしている可能性があります。受診して適切な治療を受けることをおすすめします。

特に、お子さんやご高齢の方、基礎体力が低い方は、下痢や嘔吐で体力を消耗しやすいため、早めの受診をご検討ください。


感染性胃腸炎をできるだけ早く治す方法は?


感染性胃腸炎をできるだけ早く治すためには、以下の方法や注意点を考慮してください。

水分の補給
下痢や嘔吐によって体内から水分が失われるため、脱水を防ぐために十分な水分を摂りましょう。電解質(ナトリウム、カリウム、クロールなど)も失われる可能性があるため、スポーツドリンクや経口補水液などの電解質補給飲料を摂ることが良いでしょう。
食事の調整
嘔吐や下痢が続く場合、食事は軽いものから始め、刺激の強い食品を避けましょう。おかゆや柔らかめのうどん、りんごをすったもの、バナナなどの消化が良い食品がおすすめです。
薬での治療
医師の処方により、症状を緩和するための薬(抗吐剤、抗下痢薬など)を使用することがあります。
感染源の特定
もし症状が重く、長引く場合、感染源の特定が不可欠です。感染源が食品や水などである場合、その摂取を中止し、すぐに受診してください。


感染性胃腸炎の時に、控えたほうがよい飲み物は何ですか?


感染性胃腸炎の際、水分補給は大切ですが、以下の飲み物は、控えるようにしてください。

コーヒーや紅茶、緑茶などのカフェイン飲料
カフェインには利尿作用があり、体内の水分を排出するのを促してしまうため、脱水を起こす可能性があります。
オレンジジュースやグレープフルーツジュースなどの柑橘系飲料
酸味のある飲み物は、吐き気を催してしまうことがあります。
炭酸飲料
炭酸が胃を刺激して吐き気を引き起こします。
牛乳や乳性飲料
消化する際、胃腸に負担を与えてしまいます。
アルコール飲料
感染性胃腸炎に限らず、体調を崩している際は控えてください。


感染性胃腸炎の際、下剤を飲んで早く出したほうが良いでしょうか?


感染性胃腸炎による下痢の場合、下剤の服用は一般的に控えるべきです。
下痢は体がウイルスや細菌を体外に排出するための自然な防御反応です。下剤を使用して下痢を促進すると、体が自然に病原体を排出するプロセスを妨げる可能性があります。

さらに、下痢を促進すると、脱水症状になるリスクが高まります。感染性胃腸炎の際は、すでに脱水のリスクが高いため、さらに水分を失うことは避けるべきです。また、下剤の服用によって腸が刺激され、腹痛や不快感が増す可能性があります。これにより、症状が悪化することも考えられます。

感染性胃腸炎の際は、下剤を服用せず、水分を十分に摂取し、安静にすることが大切です。
詳しくは、「感染性胃腸炎をできるだけ早く治す方法は?」をご覧ください。


感染性胃腸炎だと思いますが、下痢がひどいです。
下痢止めを飲んでもいいでしょうか?


感染性胃腸炎の際に下痢がひどい場合、下痢止めの服用は控えた方が良いでしょう。
下痢は、体がウイルスや細菌を体外に排出するための自然な防御機能です。下痢止めを飲んでしまうと、ウイルスや細菌が体外に排出されにくくなり、症状が悪化する可能性があります。特に、高熱や血便がある場合は、服用は控えた方が良いでしょう。

下痢止めは、あくまでも下痢の症状を和らげる対症療法です。感染の根本的な治療には、ウイルスや細菌の除去が必要となります。
もし下痢や腹痛がひどい、高熱がある、血便が出るなどの症状が続く場合は、速やかに医療機関を受診してください。


感染性胃腸炎が流行する季節は?


感染性胃腸炎が流行しやすい季節は、以下のとおりです。

冬季
ノロウイルスによる感染性胃腸炎は、冬に最も多く発生し、11月から3月にかけて流行のピークを迎えます。ノロウイルスは低温で活性を保ちやすく、寒い季節に感染が広がりやすいことが理由です。
秋から冬にかけて
ロタウイルスによる感染性胃腸炎は、秋から冬にかけて感染が広がります。特に乳幼児に多く見られ、特に5歳未満の子供に重篤な症状を引き起こすことがあります。ロタウイルスには予防接種(ワクチン)が有効となりますので、医療機関にご確認ください。
夏季
サルモネラやカンピロバクターなどの細菌が原因となる細菌性胃腸炎は、温かい季節に多く見られ、6月から9月にかけて食中毒の一因として流行します。高温多湿の環境で細菌が増えやすくなるため、夏には特に注意が必要です。
年間を通して
アデノウイルスによる胃腸炎は、年間を通じて発生しますが、特に季節の変わり目に流行することが多くなります。また、アデノウイルスは幅広い気温で生存できるため、季節を問わず感染が広がる可能性があります。

上記のように、感染性胃腸炎のリスクは、一年中あると言っても過言ではないでしょう。対策としては、手洗いや消毒をきちんと行い、食材の衛生管理を徹底することが重要です。