機能性ディスペプシアとは?

機能性ディスペプシア(FD:functional-dyspepsia)とは、胃の痛みや胃もたれなどのさまざまな症状が慢性的に続いているにもかかわらず、内視鏡検査などの検査を行っても、胃潰瘍・十二指腸潰瘍や胃がんなどのような異常が見つからない病気です。生命にかかわる病気ではありませんが、つらい症状により、患者様の生活の質を大きく低下させてしまう病気です。日本人の25%は機能性ディスペプシアを持っているという調査結果があり、また、病院にかかった人ではおよそ半数で機能性ディスペプシアが見つかるという具合に誰もがかかる可能性のある病気です。

主な原因は?

1つだけの原因で機能性ディスペプシアになるわけではありません。下に示すような原因がいくつか組み合わさって症状が起こると考えられています。
その他の因子も互いに影響し合い、複雑になっています。

  1. 胃・十二指腸運動が障害された場合
  2. 胃・十二指腸の知覚過敏が生じている場合
  3. 心理的要因(不安)がある場合
  4. 胃酸が原因となる場合
  5. ヘリコバクター・ピロリ感染が原因となる場合
  6. 遺伝的要因
  7. サルモネラ感染など感染性胃腸炎にかかった人
  8. アルコール、喫煙、不眠などの生活習慣の乱れ
  9. 胃の形態

症状

主な症状は、以下の通りです。

  • つらいと感じる食後のもたれ感
  • 早期飽満感(食事開始後すぐに食べ物で胃が一杯になるように感じて、それ以上食べられなくなる感じ)
  • みぞおちの痛み(心窩部痛:しんかぶつう)
  • みぞおちの焼ける感じ(心窩部灼熱感:しんかぶしゃくねつかん)

検査法・診断法

詳細な問診を行った後に、胃がん、胃潰瘍・十二指腸潰瘍などの疾患を除外するための胃の内視鏡検査、ピロリ菌感染の検査、必要に応じて血液検査や超音波検査、腹部CT検査などを行います。

治療法

胃で起こっている異常を改善する方法
酸分泌抑制薬を使用して、胃酸の分泌を抑えることで、痛みや吐き気を改善します。

敏感になっている状態を改善する方法
抗不安薬や抗うつ薬、漢方薬を使用して、脳の敏感な状態を改善します。

いずれの場合も、患者様と医師とで相談しながら、どのお薬が合うのかを試したり、作用の異なるお薬を併用するなどして治療を行います。一度は内視鏡検査を受けられることや、ピロリ菌感染がある場合には、除菌治療を受けられることをおすすめします。

よくいただくご質問

くるめ病院にお寄せいただいた、機能性ディスペプシアに関するご質問にお答えしています。
その他のご質問やご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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機能性ディスペプシアは、どうやってわかりますか?


機能性ディスペプシアの診断を行う際には、一般的に以下の基準を使用します。

症状の持続期間
腹部の不快感や消化不良などの症状が、過去3か月以上続いている場合。
症状の発現頻度
週に1回以上の頻度で症状が現れる場合。
症状の開始時期
少なくとも6か月以上前から症状がある場合。
特定異常の除外
他の疾患や器質的な異常によって症状が引き起こされていない場合。
症状の詳細や病歴をお知らせいただき、内視鏡検査や血液検査などで、他の疾患を排除していきます。


機能性ディスペプシアの治療には、どんな方法がありますか?


機能性ディスペプシアの治療方法は個人によって異なりますが、胃の機能を正常にするために一般的に以下のような治療を行います。

  • 生活習慣の改善(食事管理、ストレス管理、適度な運動)
  • 薬物療法(胃酸抑制剤、抗うつ薬、抗不安薬、ピロリ菌の除菌など)
  • 心理療法(認知行動療法、リラクセーション法)

症状の改善がみられない場合には、さまざまな薬を使い分けたり、作用の異なる薬を併用するなどして治療を行います。そのため、患者様と医師とで相談しながら二人三脚で治療を行うことが必要となります。


機能性ディスペプシアを自宅で管理する方法を教えてください。

食事を頻回にする
一度にたくさんの食事ではなく、少量を時間を分けて摂ることが良いでしょう。
トリガー食品の特定
食事の内容と症状の関連性を把握するために、食事の記録を取りましょう。症状に影響を与える食品(脂肪やスパイスの多い食品、カフェイン、アルコール、炭酸飲料など)を特定し、その食品を避けます。
消化をサポートする食品の摂取
消化を促進するために、食物繊維や消化酵素の豊富な食品(野菜、果物、全粒穀物など)を摂取することがおすすめです。
ストレスの管理
リラクセーション法、ヨガや瞑想、適度な運動を取り入れることで、腸の運動性を改善し、症状の軽減につなげます。


機能性ディスペプシアでは、他の病気を合併することはありますか?


機能性ディスペプシアの症状が発生する際は、さまざまな心理的要因が関係している可能性があり、不安やうつなどの気分障害や神経症性障害をしばしば伴うことがあります。

また、日本消化器病学会ガイドラインでは、機能性ディスペプシアの患者様の25〜50%に胃食道逆流症(胸やけやすっぱい胃内容物が口の中まで上がってくる)、過敏性腸症候群(下痢や便秘を伴うお腹の張りや痛み)、慢性便秘などが合併すると言われています。

その他にも機能性ディスペプシアと診断される患者様のなかには、胆嚢や膵臓の病気が隠れている場合もあります。必要に応じて胃がん、胃潰瘍・十二指腸潰瘍などの疾患を除外するための胃内視鏡検査をはじめ、ピロリ菌感染の検査、必要に応じて血液検査や超音波検査、腹部CT検査などを行うことがあります。


機能性ディスペプシアは、完治させることができますか?


機能性ディスペプシアは、完全に治癒させることは難しいとされ、数ヵ月間で5人に1人くらいが再発すると言われています。症状が軽減したり、長期的な管理が可能になる場合もありますが、残念ながら完全な治癒法はまだできていません。

機能性ディスペプシアにおける現在の治療は、薬物療法、生活習慣の見直しや食事管理、ストレス管理などのアプローチが一般的に使用されます。これらの治療法を組み合わせて、症状を軽減し、生活の質を向上させることを目指します。

治療の効果は個人差があり、その治療法がその人に有効であったとしても、他の人には効果がない場合もあります。症状の重症度や個人の生活習慣、身体的な特徴なども影響を与えるため、適切な治療法を見つけるには時間と忍耐が必要です。

大切なポイントは、「専門医の指導を受けながら症状の管理に取り組むこと」です。症状の変化や進行状況を教えていただくことで、より最適な治療法や管理方法を提案することが可能になります。