潰瘍性大腸炎とは?
潰瘍性大腸炎は炎症性腸疾患の一つで、大腸の粘膜に炎症が起きることによりびらんや潰瘍ができる原因不明の慢性の病気です。潰瘍性大腸炎は、厚生労働省から難病に指定されていますが、適切な治療をして症状を抑えることができれば、健康な人とほとんど変わらない日常生活を続けることが可能です。
主な原因は?
原因はまだ明らかになっていません。
腸内細菌の関わりや免疫システム(外敵から体を守る白血球からなる防御システム)の異常、食生活の変化、ストレスなどが考えられています。
症状
主な症状は、下痢・血便・膿粘液の排出・腹痛で、これらがくりかえし、持続してあらわれます。
初期症状は、必ずしも膿粘血・下痢便ではなく、下痢から始まり数週間の後に血液や膿粘液を伴うようになります。
検査法
潰瘍性大腸炎の診断は、内視鏡で直腸からS状結腸を見るだけでほとんど可能となります。
治療法
原則的には薬による内科的治療が行われます。
重症の場合や薬物療法が効かない場合には、手術が必要となります。
抗TNF-α抗体製剤による治療(生物学的製剤)については、こちらをご覧ください。
現在服薬していますが、いつまで薬を飲むのでしょうか?
薬の種類にもよりますが、5-ASA製剤(メサラジンやリアルダ等)は基本的に生涯に渡り服薬を続けていくことが多いとされています。これは、薬によって病状を安定させて寛解維持(=寛解期※)とするためです。
活動期*での寛解導入の際に使うステロイド(プレドニン等)は、症状の改善度を観察しながら漸減し、最終的に中止することになります。ただし、病状次第では、継続する場合があります。
寛解期になると、病気でなかった時とほぼ変わらない生活を送ることができます。
潰瘍性大腸炎は、再燃(寛解期から再び活動期に移行)する可能性が高く、再燃を予防するために維持療法が必要です。
寛解を維持し再燃を予防するためには、薬を飲み続ける必要があります。
ある2年間の調査研究では、薬をきちんと飲んでいた患者様の約9割が寛解を維持していましたが、きちんと薬を飲んでいなかった患者様では、約6割が再燃していたとの結果報告があります。
※活動期:腹痛・下痢・血便などの症状のある状態
※寛解期:上記症状の無い状態
治療中に妊活は可能でしょうか?
はい、可能です。
「薬剤が胎盤を通して胎児に影響するのではないか」といった心配や不安はよく伺います。ステロイドや5-ASA製剤(メサラジンやリアルダ等)含め、妊活と治療の両立が可能と考えられています。
生物学的製剤を使用している場合は、出産時期を考慮した投与計画が必要となります。
個人差や経過によって変わることもありますので、妊活を考慮される際には、事前に医師・薬剤師・看護師にご相談ください。
控えた方がよい食べ物はありますか?
基本的に一口も食べてはいけない食品はありません。
そもそも食事療法とは、食事を制限するばかりではなく、適量を食べることであり『自分の体に合った食事』を摂ることです。
脂質の多いものや刺激の強いものは減らしたり、それらを食べたら次の食事や翌日に調整したりするなどと、柔軟に考えることが大切です。
毎日完璧を目指しても長続きしないので、2~3日でプラスマイナスゼロになるようにしましょう。脂質の多いものを食べたら、次は脂質が少なくて美味しいメニューは何だろうと発想の転換を図るのも良いと思います。
また、時には「自分にご褒美をあげる」ことも大切です。例外の日を作って、モチベーションを上げて長続きさせましょう。
治療中にお酒は飲んでもいいのでしょうか?
アルコールは血液の循環を始めは良くしますが、その後、血液循環を悪くするという特性を持っています。また、アルコールは直接的に腸粘膜を刺激し、悪い物質を粘膜内に入りやすくする性質を持っており、潰瘍性大腸炎を悪化させるというデータが出ています。活動期にはお酒を飲むのを控えたほうが良いでしょう。
状態が良い時に限って言えば、ストレス解消のために少量の飲酒は、食事療法を長続きさせるためには必要なのかもしれません。
しかし実際には、飲み始めれば一杯のつもりが多くなってしまうことがあり得ると思いますので、現時点ではアルコールは控えたほうがよいでしょうと言わざるを得ません。
たびたび下痢します。
なるべく水分を控えていますが、体への影響は大丈夫でしょうか?
「水分を摂ると下痢になってしまうのではないか?」と水分摂取を控えている方は実際に多いようです。ところが、水様便(いきまなくてもシャーっと出る液状の便)が何度もある状態では、通常よりもたくさんの水分や電解質が失われています。こうした状態が続くと「脱水症」の恐れがあります。電解質の欠乏にも注意が必要です。
水、お茶などのほか、塩分と糖分、カリウムの補給が大切です。
具体的には、スポーツドリンク、味噌汁、野菜スープ、野菜ジュース、昆布茶、りんごジュース、桃ジュース、洋ナシジュースなどが良いでしょう。常温で少量ずつこまめに飲むことが大事です。
また、ゼリーや果物、雑炊、麺類、シチュー類、卵豆腐など、水分が多い食品やメニューもお勧めです。
症状が改善しない場合は、市販の経口補水飲料を飲んでみましょう。