括約不全とは?
排便には内肛門括約筋、外肛門括約筋、肛門挙筋、恥骨直腸筋という4つの筋肉が関与しています。これらの括約筋が切れたり、薄くなったりすることで、便を保持するための機能が低下することを括約不全といいます。また、括約筋の力が弱まると、便もれやガスもれが生じます。
主な原因は?
- 分娩時や外傷・肛門疾患手術時の肛門括約筋の損傷
- 高齢による括約筋の力の低下
- 神経性の疾患
- 直腸脱
- 腸の術後の後遺症
- 骨盤会陰下垂
なりやすい人は?
女性:分娩により括約筋を損傷してしまうことがあります。
高齢者:70歳をすぎると急に括約筋の力が低下します。
症状
便もれ、ガスもれ
検査法
直腸肛門機能検査{肛門内圧測定、肛門エコー、フェコフロメトリー(便流量測定)、ディフェコグラフィー(排便造影検査)、直腸機能検査等}を行います。
診断方法
直腸指診と直腸肛門機能検査の結果により診断します。
治療法
・便性状のコントロール(食事療法や薬剤の使用)
・肛門括約筋のトレーニング(骨盤底筋体操、バイオフィードバック療法、電気刺激)
・手術
手術
肛門括約筋修復術
退院後の日常生活
術後、肛門機能の訓練が必要です。
薬について
緩下剤やポリフル(過敏性腸症候群治療剤)などを使用します。
予防法
- 肛門括約筋のトレーニングをしましょう。
- 食事療法や薬剤使用による排便コントロールをしましょう。
- 早めに専門医を受診しましょう。
括約不全は放置すると、どうなりますか?
括約不全は、肛門周囲の筋肉である括約筋の機能が正常でなくなることで、肛門が適切にしまらなくなる疾患です。括約不全を放置すると、さまざまな症状や合併症が進行する可能性があります。
- 便失禁
- 便意を感じた際、適切にコントロールできなくなり、便失禁が起こることがあります。肛門周囲に発疹や炎症が生じる可能性があります。
- 腸の機能障害
- 腸の正常な運動や排便が妨げられることがあります。
- 生活への影響
- 上記の症状により、日常生活や活動に制約を受けることがあり、QOL(生活の質)が低下することがあります。
括約不全の症状が現れた場合は、できるだけ早く医療機関を受診して、症状をコントロールし、合併症を防ぐための対策を取ることが大切です。
括約不全を予防するために、何かできることはありますか?
括約不全を予防するためには、適切な便通を促進するために食事に十分な食物繊維を含め、適度な運動を継続して行い、体重を管理しましょう。
また、骨盤底筋の強化運動を定期的に行い、過度ないきみ、長時間の便秘や下痢を避けるよう心がけましょう。
他にも、出産時には、適切な産前産後のケアや、分娩時の指導を受けることが重要となります。
出産後に括約不全になりやすい原因は何ですか?
出産後に括約不全になる主な原因は、出産時に括約筋が過度に伸びたり損傷を受けたりすることです。
特に、複数回の出産や大きな赤ちゃんの出産、分娩時の合併症などがリスク要因として関連しています。
これらの要因によって、括約筋の機能が低下し、括約不全のリスクが高まります。
括約不全での肛門機能の訓練とは、どんなものですか?
括約不全の肛門機能をトレーニングする方法は、症状や状態に応じて個別に行います。一般的には、以下のような方法があります。
1. バイオフィードバック
括約筋の活動を意識的に制御するための方法です。センサーや電極を使用して、括約筋の活動や肛門の圧力を測定・フィードバックして、括約筋の強化およびリラックスさせるトレーニングを行います。
2. レクタルバルーントレーニング
特殊なバルーンを直腸に挿入し、膨らませて肛門周囲の筋肉をトレーニングする方法です。
3. ペリネトレーニング
骨盤底筋群のトレーニングのことで、妊娠や出産でゆるんだ骨盤や骨盤底筋群を強化します。
4. 適切な排便トレーニング
医師や栄養士からアドバイスを受け、食事療法や水分摂取、排便のタイミングを調整します。
訓練の効果を上げるためには、継続的なトレーニングと専門医から指導を受けることが必要です。
括約不全がなかなか治りません。なぜでしょうか?
括約不全が治りにくい理由はいくつかあります。
まず、括約不全の原因は個々に異なり、その原因に応じた治療が必要です。治療には時間と継続性が欠かせず、患者様自身も努力が必要です。
また、括約不全は恥ずかしさを感じることがあり、治療に対するハードルとなることがあります。さらに、合併症の発生も治療を複雑化させ、回復を遅らせる可能性があります。