直腸粘膜脱とは?

直腸は粘膜で覆われており、その表面の粘膜がたるみ、肛門の外に脱出する状態をいいます。

主な原因は?

直腸の組織を支える支持組織が弱くなることが背景にありますが、大きな痔核やポリープが肛門外に脱出する際に、一緒に引っ張られる事が原因となるものもあります。何度も息むなど、無理な排便が原因になります。

なりやすい人は?

乳幼児・高齢者

症状

排便時の直腸粘膜の脱出。粘液の下着付着。痛みはありません。

発生部位

直腸~肛門

好発年齢

肛門括約筋の発達が未熟な乳幼児や高齢者

病気に気づいたら

専門病院の受診をおすすめします。

診断方法

視診・触診と共に努責診が必要です。

検査法

診察時に脱出していなければ、直腸粘膜脱を見逃す事になるため、問診で直腸粘膜脱を疑った場合は、努責診を行います。
当院では、浣腸し、排便を促して肛門の状態を観察します。また、直腸肛門機能検査を行い、原因となる病態を診断します。

治療法

乳幼児:肛門括約筋の発達と共に自然に軽快します。特別な治療は必要とせず、脱出時に用手的に還納(指で肛門内に納める)で十分です。

高齢者:まず排便コントロール、バイオフィードバック療法により排出訓練を行ない、それでも軽快しない時は手術を適応とします。

手術

粘膜切除手術

後遺症について

排便コントロールが良くないと再発する可能性があります。

退院後の日常生活

息まずに排便できるように便の調整をしていきます。

退院後の通院について

医師の指示のもと、通院してください。

薬について

脱出症状が軽い場合は坐剤を使用します。

予防法

便をコントロールし、スムーズな排便を心がけましょう。
力まずに排便しましょう。

よくいただくご質問

くるめ病院にお寄せいただいた、直腸粘膜脱に関するご質問にお答えしています。
その他のご質問やご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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トイレの際に肛門から何か出ています。痛みは今のところありませんが、何でしょうか?


排便時の過度のいきみによって、普段は出てこないはずの下部直腸の粘膜が、肛門下部へ押し下げられて肛門から脱出した状態で、直腸粘膜脱の可能性があります。

直腸粘膜脱は痛みがないため気づきにくく、出たり入ったりを繰り返します。そのまま放置すると、慢性的に肛門括約筋が引き伸ばされるため、肛門を締める力が弱くなることで、さらに脱出しやすくなり、脱出した腸が傷ついて出血したり、戻りにくくなってしまうことがあります。

直腸粘膜脱については、一般的には自然治癒することはありませんので、まずは専門医を受診されることをおすすめします。


直腸粘膜脱が起きる原因は何でしょうか?


直腸粘膜脱は、以下の2つの原因によって発症するとされています。

直腸粘膜の緩み
直腸に便がたまったり、加齢などで腸の筋肉が衰えたりすると、徐々に直腸の粘膜が緩んできます。
骨盤を支えている筋肉の緩み
骨盤底筋群と呼ばれる複数の筋肉が一緒になって、お腹の下の方にある臓器を支えています。これらの筋肉が緩んだり、弱くなったりすると、直腸を支えることができず、直腸が裏返って出てくることがあります。


直腸粘膜脱を予防する方法はありますか?

  • 便秘にならないようにする(硬い便・緩い便にならないように食生活などを改善する)
  • 排便時にいきまないようにする
  • 骨盤底筋体操を行う

《骨盤底筋体操》

  1. まず仰向けに寝て、足を肩幅に開き、両膝を軽く曲げて立て、体をリラックスさせます。
  2. その姿勢のまま5秒程度肛門を締め、その後、陰部全体をじわじわっと引き上げる感じで締めます。
  3. その後は、力を抜いて、体をリラックスさせます。

「(2)締める」「(3)力を抜く」を、1分間のサイクルで10回(10分間)繰り返し行ってください。


若くても直腸粘膜脱になりますか?


一般的に、直腸粘膜脱は中年以上の人によく見られますが、若年者でも発症することがあります。

若年者の直腸粘膜脱の原因としては、遺伝的要素や先天的な組織の弱さ、長期間の便秘、重い物の過度な持ち上げ、妊娠や出産、過度の腹圧などが考えられます。また、過度の運動やスポーツの際の負荷、慢性的な腸の炎症疾患なども、若年者における直腸粘膜脱のリスク因子となり得ます。

直腸粘膜脱の症状が現れた場合、適切な医師の診察を受け、最善の治療法や予防策を取ることが必要です。若年者でも直腸粘膜脱の可能性がある場合は、放置せずに早期の治療を行ってください。


直腸脱と直腸粘膜脱の違いは何ですか?


直腸脱は直腸全体が下がってしまうことを指し、直腸全体が外に脱出します。一方、直腸粘膜脱は、下部直腸の粘膜だけ脱出することを指します。直腸粘膜脱は直腸脱よりも肛門側に下がる範囲が狭いこともあり、「不完全直腸脱」と呼ばれることもあります。

どちらの状態も肛門からの脱出があるため、いぼ痔(内痔核)と間違えられやすい疾患です。正確な診断と治療のためには、医師の診察を受けることが必要となります。


出産後に直腸粘膜脱になる可能性はありますか?


出産時の腹圧の増加や骨盤の変化などによって、出産後に直腸粘膜脱になることがあります。出産後の直腸粘膜脱の症状は、以下のようなものがあります。

肛門の突出感
直腸の粘膜が肛門から突出し、外観的にもわかる場合があります。肛門から脱出している組織が見えることがあります。
肛門の不快感
突出した粘膜が肛門に触れることで、不快感や異物感を感じることがあります。
下痢や便秘
直腸粘膜脱によって直腸の形状や機能が変わることがあり、下痢や便秘が生じることがあります。

出産後の直腸粘膜脱は、通常は軽度で自然に改善することがあります。一般的には、骨盤底筋の回復や生活習慣の改善によって症状が緩和されることが期待されますが、症状が重度である場合や日常生活に支障をきたす場合は、専門医の受診をご検討ください。