妊産婦さんの痔

出産経験のある女性の約7割に痔の経験

妊娠すると子宮が増大することによって、血管が圧迫、鬱血し、また腸の圧迫による排便障害が生じたり、妊娠中に分泌される黄体ホルモンの影響で腸の動きが鈍くなり、便秘になったりします。さらに、食事や運動などの状態が悪くなることで、痔になりやすくなります。多い痔疾患は、痔核(いぼ痔)裂肛(切れ痔)で、出産経験のある女性の約7割に痔の経験があるという報告があります。

妊産婦さんの痔の治療は、できるだけ保存的治療(坐薬や内服薬等のお薬の治療)を試みますが、妊娠初期での薬の使用は避けたほうがよく、薬の成分によっては使用してはいけない場合がありますので、自分で判断せず、必ず専門医に相談しましょう。また、重症の痔で痛みが激しい場合には、一般的に安定している20〜32週の間に手術を行うこともあります。

痔にならないようにするためにも
「便秘」を避けることが大切です。

食物繊維が豊富な食事(ヨーグルト、野菜、果物、山芋、わかめ、納豆、ごまなど)を摂り、香辛料などの刺激が強い食事は避けてください。また妊娠中は、強く息まずに便通を整えて、おしりの清潔にも注意しましょう。
もし便秘になってしまい便が硬い場合には、下剤を使用します。下剤には、さまざまな種類がありますので、適切な処方を行うためにも、早めに専門医を受診してください。

結婚前に「思い切って手術を受ける」ことも一つの手段

若い女性は、もともとあった痔が妊娠や出産によって悪化してしまい、症状が強くなる可能性があります。出産後に痔の手術のための入院は、小さなお子さんがいたりして長期間家庭を留守にすることになり、なかなか難しいものです。痔の症状がある若い女性は、結婚前に思い切って手術を受けることも一つの手段だと考えます。

痔の手術は、症状によって異なりますので一概には言えませんが、傷の治りや結婚の準備等を含めて、3か月前には受診されることをおすすめします。

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よくいただくご質問

くるめ病院にお寄せいただいた、妊産婦さんの痔に関するご質問にお答えしています。
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どうして妊娠中は、便秘になりやすいのですか?


妊娠すると乳腺の発達を促したり、妊娠を順調に進めるために黄体ホルモンがたくさん分泌されます。この黄体ホルモンの影響で腸の動きが鈍くなり、便秘しやすくなります。また、大きくなった子宮が腸を圧迫することや、妊娠中の運動不足も便秘の原因となります。


妊娠中に下剤を飲んでもいいですか?


妊娠中は、できる限り薬に頼りたくないものです。薬の中には、子宮収縮を誘発したり、流早産の危険性を有するものがありますので、妊娠中に使用できないものもあります。あまりにも便秘が苦しい場合は、医師に相談してください。


妊娠中、痔になりにくくするには方法はありますか?


便秘の予防とおしりに負担のかからない生活が重要です。まずは、食事の内容や冷えなどに注意しましょう。
安定期に入ったら積極的に運動することが大切です。マタニティビクスや散歩など、妊娠中でも安心してできるものがよいでしょう。


妊娠中に痔になったらどうしたらいいですか?


かかりつけの産婦人科の担当医にご相談いただき、生活習慣を見直してみましょう。
それでも気になる方や症状が悪化した場合は、自己流に頼らず、専門医がいる肛門科を受診してください。


出産が終わったら、痔は治りますか?


出産後に症状が治まる方もいらっしゃいますが、中には再発したり慢性化する方もいらっしゃいます。
気になるようでしたら、まずは産婦人科の医師へご相談ください。直接、肛門科専門医へご相談いただいても構いません。


産後に痔になったようです。どうしてでしょうか?


出産で腹筋が緩んだ状態となり、授乳で慢性的な水不足になり便秘になりやすいことが要因として挙げられますので、水分や食物繊維を多く摂るように心がけましょう。また、育児や家事による体への負担やストレスも原因となることがありますので、できる限りリラックスした生活を心がけましょう。


妊娠中に痔の手術はできますか?


妊娠中の手術は避けて、できる限り保存的治療(薬での治療)を試みます。
痔の状態など、場合によっては、安定期に手術を行うこともあります。


会陰裂創とは、何ですか?


肛門と膣の間は薄く、出産時に負担がかかり、無理をして裂けることが原因で起こります。出産直後に縫い綴じて治療します。
筋肉の損傷の程度によっては、便失禁やガス漏れが生じることもあります。


出産直前ですが、痔があります。治すべきでしょうか?


まずは産婦人科の医師にご相談ください。直接専門医にご相談いただいても構いません。


若い女性の痔は、どうしたらいいですか?


妊娠、出産の影響で、さらに痔が悪くなる方は多く見受けられます。
入院・手術のため長期間家庭を留守にすることは、お子さんがいれば容易にできることではありません。症状によっては、結婚・妊娠前に思い切って手術を受けることをおすすめします。
創(傷)の治りや排便コントロールのため、少なくとも3か月前には受診をご検討ください。


子供が小さいので一緒に病院へ連れてきてもいいですか?


診察室は個室になっており、お子さんも一緒に入ることができますので、安心してご来院ください。


そもそも痔にならない方法はありますか?


ぜひ一度「痔にならない7つの方法」をご覧ください。