便秘について
便秘の原因
便秘は原因によって大きく3つに分類されます。
- 薬剤性便秘
種々の薬物により腸管運動が阻害されたものです。原因となる薬剤には、制酸薬・抗コリン剤、抗うつ剤、パーキンソン病治療薬、麻薬(モルヒネ製剤、リン酸コデイン)、咳止め・風邪薬、喘息の薬(気管支拡張剤)があります。 - 器質性便秘
癌などで大腸が狭窄を来たし、便が通りにくくなったものです。多くは手術の対象となります。 - 常習性便秘
1と2の便秘をのぞいたものが常習性便秘です。急性便秘は旅行などちょっとしたきっかけで一時的に便が出なくなるだけですので、その原因がなくなれば改善します。皆さんが困っているのはほとんどが慢性便秘です。しかし、その原因は単純なものではありません。大腸の動きが悪い大腸型、大腸の一部がけいれんを起こして通りにくくなり、それが時には下痢を引き起こすこともあるけいれん型、さらに排便の仕方が悪い直腸型があります。
便秘の診断
便秘の診断は大腸内視鏡検査や注腸造影検査で器質性便秘を除外し、大腸輸送能検査、排便造影、直腸肛門機能検査など特殊検査を組み合わせて行います。
便秘の治療
便秘の治療の基本は生活習慣の改善です。便秘の原因は様々の要因が重なっていることが多いので、どのタイプの便秘の方でも生活改善が有効です。
- 食事療法
食物繊維を十分にとること。腸内細菌を正常化する目的で、ヨーグルトや乳酸菌飲料の摂取が有効です。 - 水分の摂取
水分を十分摂ることで便が柔らかくなります。 - 運動療法
高齢になると筋力がおとろえ運動能力の低下を来たします。そこで、無理をしない程度の散歩や筋力維持のためのリハビリが必要となります。
以上の方法でどのタイプの便秘でもある程度の効果が出てきます。しかし、中等度以上の便秘では解消するまでは行きません。そこで大腸型の方に対しては、腸の動きを強くする薬や緩下剤、状況に応じた刺激性下剤を用います。直腸まで便が届いていないのに浣腸などを頻用すると、刺激ばかりが強くなって便意のみの不愉快さが残るという悪循環をきたしてしまうこともあります。
けいれん型の便秘に対しては、ストレスをとる抗不安薬やけいれんを弱める薬を使います。直腸型の方には排便訓練が有効な場合があります。排便時には肛門を緩めなくてはなりませんが、逆に締めている人には非常に有効です。骨盤底の筋肉が弱まって直腸に腹圧がうまく伝えられない方にも訓練が有効です。
便秘対策
1.便意は我慢しない。
便意がおきたらすぐトイレに行きましょう。
2.一日3回規則正しい食生活を心がけましょう。
わたしたちの生活にはリズムがあります。食事も排便もそのリズムの一環です。特に朝食抜きは、食べると胃腸が動き出すという反射が鈍くなり、便秘につながります。
3.食物繊維の多いものをよく噛んで食べましょう。
4.便をやわらかく保つように水分を十分にとりましょう。
5.睡眠を十分にとりましょう。
胃と腸は自律神経でコントロールされています。ストレスや緊張でそのリズムを崩してしまうと便秘の原因になります。健康維持も含めて、睡眠はできるだけしっかりとりましょう。
6.趣味など気分転換をはかりましょう。
7.適度な運動をしましょう。
日常生活の中で積極的に体を動かしましょう。腹筋を鍛えるため、意識的な腹式呼吸も一つの方法です。
8.下剤の助けをかりて、便意をコントロールしましょう。
薬だけに頼るのではなく、生活パターンも見直して、必要なときは、緩下剤の助けを借りて、便意をコントロールしていきましょう。